
横浜の工作船展示館に行ってきました。ここには2001年に起こった「九州南西海域工作船事件」で海上保安庁の巡視船と交戦の結果、自沈するに至った北朝鮮の工作船を引き揚げて保管しています。

工作船は漁船に偽装していますが、その能力は全くなく、四軸の推進器を大出力の発動機で駆動して30ノットを遙かに超える高速船でした。内部には日本への潜入工作用の小型船を収用できるようになっており、他にも水中スクーターやゴムボートを搭載しています。また多数の火器を搭載しており、日本の巡視船への攻撃も行われて海保に負傷者も生じています。当時の日本の某新聞は「沈没した船は『不審船』と断定はできない」とか「違法な戦闘行為」と主張して海保の対応を非難しました。果たして『不審船』がそんな生ぬるいものだったのか見てみる事にしましょう。

工作船の船首部は鋭いV字断面で高速航走に向いた形状です。船体の傷みが激しいですが、船体を構成している鋼板はかなり薄いそうです。構造も脆弱で高速を出すために軽量化した結果かもしれません。

後部からみたところ、船尾の舟艇収納部の観音開きの扉が一部見えます。全長は約30m、排水量は50トン弱です。黄色いのは自沈の時の爆発で損傷した船体の補強材です。

最大の特徴である、船尾の観音開きの扉、舟艇発進と収納のためです。船の後部はこの収用部で占められており、前部はほとんどが機関部でした。上部の構造物も操舵室の他は多くが対空機関砲の収用部で占められており、乗員のためのスペースはほとんどありません。

推進器は4軸で漁船ではまずあり得ません。戦闘艦艇並みですね。

舟艇収用部の状況です。側面は燃料タンクになっています。奥は自沈の時の爆発で大きく壊れています。

後部甲板の状況。元々はダミーの船室があって、収納されていた14.5ミリ対空機関砲をレールで引き出すようになっていました。煙突も偽装で排気孔は側面にありました、高出力の発動機を複数搭載している事を隠すためだったようです。

操舵室付近、操舵室の後の区画にカマドがあり、この狭い区画で10人前後の乗員が生活していたと考えられます。

第2機関室、搭載されているのはロシア製の高出力ディーゼルエンジン。

前部甲板の状況、第1機関室が見えます、搭載している機関の総出力は4000馬力に達するそうです。その前にある開口部は内部にベースがせり上がるギミックがありました。本来は対空機関砲の秘匿用だったと推定されていますが、この船はゴムボートの収用部になっていました。船首付近には無反動砲の砲架があります。

潜入工作用の搭載舟艇、漁船に偽装していますがボルボ製の高出力発動機を搭載。

潜入工作用のゴムボートと水中スクーター。

工作船を引き揚げた関係者が驚いたのは、搭載している武器の多さでした。これは14.5ミリ対空機関砲です。

携行型の対空ミサイルと無反動砲。

ヘルメットも発見された。

巡視船あまみは自動小銃の射撃で負傷者を出しました。

対戦車ロケット弾での攻撃を受けたことも判明しています。

自爆用スイッチ。搭載舟艇からも爆発物が発見されています。最終的に工作船は爆発物で自沈しました。海保は生存者を発見しましたが、相手が抵抗を止めないために救助はできず、工作船の生存者はいません。

日本の沿岸部の地図も発見されています。拉致被害者もこのような工作船の活動で連れ去られたのでしょう。

北朝鮮側は現在に至るまで、関係を認めていません。