荒野のコトブキ飛行隊。羽衣丸が巨大なのは判るけど、あんな空中空母化するための浮力をヘリウム飛行船で実現するのは可能なのだろうか?
羽衣丸に似ているドイツの飛行船ヒンデンブルクLZ129は構造材がジュラルミンと張り線。表面はドープを塗った綿布。内部に複数のガス嚢が収められていた。羽衣丸も飛行甲板の上はガス嚢が詰まっているのだろう。二式複戦で破壊したのは各ガス嚢の排出弁?
有名なヒンデンブルクの火災は表面に塗ったドープに含まれているアルミニウム粉末が静電気で発火したと言われている。ヘリウム飛行船でも火災は起こっただろうがあそこまでは拡大しなかったと思われる。ツェッペリン社はその後火災対策をしている。それまでは水素の運用で発火はなかったし、羽衣丸と同じく本来の予定通りにヘリウムを使用していたら別な飛行船の歴史があったかもしれない。
ヘリウムは希少物質でアメリカでしか生産していなかった。ヘリウムは宇宙的には水素に次いで二番目に多い物質で、最初に太陽の分光分析で発見されたように、太陽にも多いが、地球上では天然ガスに僅かに含まれているだけです。だから非常に高価だった。もっとも水素飛行船にもメリットはあり、ヘリウムより軽いのでペイロードに余裕が出来る。安価なので、操船で浮力を減らしたい時に気楽に排出できた。ヘリウムは高価で補充が容易でなく、捨てるのは厳禁だったらしい。羽衣丸は損傷修理も含めて相当な損害と思われる。マダムもアタマが痛いかな?
マダム「経費削減のために水素使うわよ!」とかなりませんように。('-'*)
さて、羽衣丸の「クラウドベース」化(知っている人いるかな?)についてちょっと考察してみよう。あくまでも大ざっぱな推測なので数字おおよそのものである。
まずドイツの飛行船LZ129ヒンデンブルクを見てみよう。全長245m、幅41.2m、容積20万m3という巨大な飛行船である。容積をガス嚢の容積だと単純化すると20万m3の空気がもつ質量は240トンとなる。水素ガスは17トンだからヒンデンブルクの浮力は最大で223トンである。ヒンデンブルクのペイロードは資料によると60トンである。つまりあれだけ巨大だけど、船体の重量は163トン以下しか無いという事になる。予備浮力が必要だから船体構造は実際にはもっと軽く作られている筈だ。見た目は空飛ぶ戦艦だけど船体そのものの自重は100トンそこそこしかない事になる。
世界一周したグラーフツェッペリンは容積が半分の10万m3しかない。ペイロードは30トン、積載量が容積に比例している事が判る。ただし、容積あたりの構造重量は飛行船が大きくなるほど低減傾向にあるらしい。以上は水素を使用した場合だが、ヘリウムを使うと重いので1割程性能が低下する。
ヒンデンブルク程度の性能では空母運用は不可能だと思われる。もっとも相似形だけど、羽衣丸はヒンデンブルクより遙かに大きい。仮に全長で2倍の490mとすると容積は8倍の160万m3となり、ヘリウムを使った場合の浮力理論値は1650トンで、幅はあるがペイロードは500トンくらいになりそうである。ネットでは全長400mという推測もあった。羽衣丸は全長でヒンデンブルクの約2倍というのは妥当な推測ではないかと思う。
ざっくり船体重量1000トン、積載量500トンといったところ。船体構造について船体巨大化による重量比の低減が見込めるので、飛行甲板や航空機運用のための諸設備の重量もクリアできそうな気がする。これならば工夫すれば「クラウドベース」羽衣丸が実現できるのではないか。パイロットは女の子だし。飛行甲板は自衛用の航空機搭載用でもあり、500トンの貨物積載スペースと考えると納得いく。500トンあれば10機程度の戦闘機と燃料や交換部品を積んでも余裕があるだろう。コトブキ飛行隊だけならば、貨物も多く搭載する事が可能だと思われる。

LZ130グラーフツェッペリンUの解説図。これは世界一周したLZ127ではなく、LZ129ヒンデンブルクの姉妹船です。ヒンデンブルクの事故のために結局就航する事はありませんでした。形状は羽衣丸に良く似ています。羽衣丸はこれを拡大して下部の旅客区画に全通飛行甲板を通している。飛行甲板の両側に居住区があるのでしょう。搭載している機関はディーゼルでした。余談ですがLZ127の動力だけはちょっと特殊で、LPGのようなブラウガスというガス燃料を使う機関を搭載していました。



建造中のLZ127グラーフツェッペリンです。硬式飛行船の精緻を極めた構造が凄いです。初期の構造材はアルミニウムでしたが、後にジュラルミンになったそうです。荒野のコトブキ飛行隊の世界ではユーハングから持ち込まれた超々ジュラルミンが活用されているかもしれませんね。
posted by はるなブログ(コミPo!を主に使った日記) at 13:33|
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